プロボ能登:事例紹介 持木歯科医院さま
プロボ能登:事例紹介 持木歯科医院さま

持木歯科医院さまの外観
能登町・宇出津で三代にわたり地域の人々の歯と暮らしを支えてきた「持木歯科医院」。
地震による断水と停電のなかでも、できる限りの診療を続け、地域住民の物資拠点にもなった医院です。
今回のプロボ能登の支援では、LINEやInstagramを活用し、遠方から来る人たちにも「見つけてもらえる歯医者さん」へ。
院長の持木一茂さん、スタッフの持木鮎美さんに、当時のこと、そして支援を通じた変化を伺いました。
目次
持木歯科医院について

院長の持木一茂さん(左)、持木鮎美さん
プロボ能登事務局:
今日はありがとうございます。まずは「持木歯科医院」さんについて教えていただけますか。
一茂さん:
うちは祖父の代からの歯医者で、私で三代目です。30歳で開業して、もう40年になりますね。合わせると100年近くこの場所で診療しています。田舎の小さな歯医者ですけど、地域の人に支えられてきました。
鮎美さん:
うちは「患者さんが一番」。まずはしっかり話を聞くことを心がけています。困っていることを聞くと、治療以外にも地域の生活のことが見えてくるんです。
発災時の状況
プロボ能登事務局:
お二人も能登半島地震の被害にあった当事者だったと思うのですが、地震が発生したあとは、どんな状況でしたか?
鮎美さん:
最初は水が出なくて、診療どころではありませんでした。でも“何かできること”と思って、歯ブラシや歯磨き粉を無償で配りました。
避難所には物が届くけど、家にいる人たちのもとには届かない。だから「うちに置いておくから自由に持っていってください」とInstagramで発信したんです。
一茂さん:
うちは診療所ですけど、いつのまにか物資の拠点になってましたね。赤十字が簡易トイレも設置してくれて、本当に助かりました。
プロボ能登事務局:
診療はどのくらいで再開できたんですか?
一茂さん:
1月の中旬には午前だけ開けました。水がなくてもできること──入れ歯の調整や痛み止めの処方、外れた詰め物の修理──からです。歯科医師会がポータブル機械を貸してくれて、タンクの水でなんとか治療ができました。
鮎美さん:
みんな大変な時だからこそ、できる範囲で支えたい気持ちでした。

持木一茂さん。さまざまな対応に当たられた診療室にて。
顕在化してきた課題とプロボ能登
プロボ能登事務局:
発災後すぐに営業を再開され、できることから取り組まれたのは本当にすごいですね。その中でどんな課題がありましたか?
鮎美さん:
震災のあと、工事の人やボランティアの人がたくさん来てくれました。でも「歯医者がどこにあるのかわからない」って言われることが増えて。
地元の方なら大丈夫なのですが、県外などから支援に入ってくださる方だと、歯医者の場所から説明しないといけない。その説明も地元のランドマークを中心に説明してもなかなか伝わらないという状況が増えてきました。
また、診察できる時間も状況によって変わることがあったので、逐次発信をしていきたいなぁと思い、InstagramやLINEの活用を考えたんです。
でも、正直いいやり方が分からなくて…。
そんな時に北國銀行さんからプロボ能登という取り組みについて教えてもらいました。「LINEヤフーさんならネットに詳しいし、教えてもらえるかも」と思ってお願いしました。
プロボ能登事務局:
担当させていただいたプロボノメンバーとのやり取りはどうでしたか?
鮎美さん:
対応してくれたのはお二人でした。1名はLINEでの発信の仕方について、もう1名はネット検索でどうしたら検索結果画面のいい位置に表示できるのかというSEOについて教えてくれました。私は本来人見知りなんですけど、画面越しだと逆に話しやすかったんです。
疑問や質問を出すと、次の回にはきちんと答えを持ってきてくれて、本当に丁寧でした。
一茂さん:
横で見てて、楽しそうに取り組んでるなと思いましたね。オンラインのほうが気負わずできてる感じがありました。

鮎美さんはいつもこのデスクでZOOMでの打ち合わせをし、SNS投稿などを行っていたとのこと
プロボ能登事務局:
プロボノでの支援を終えた今だから思う「こうしてもらえるともっとよかったな」という点はありますか?
鮎美さん:
これと言って特にはないです。先ほども触れたようにオンラインだから逆に話しやすかったというところもあります。しかも定例で行うミーティングが週1回というペースなのもとても良かったです。毎日だとおそらく負担になっていたと思うし、月1回だと忘れてしまったり中弛みしてしまったりしたのではないかと思います、日常業務や生活と両立でき、私にはちょうど良かったです。
プロボ能登の魅力と今後
プロボ能登事務局:
プロボ能登でのサポートは、どんな魅力やメリットがありましたか?
鮎美さん:
InstagramやLINEのことってどうしても「今さら人に聞けない!」という感覚が強くて。多分本当に基礎的なことも質問したと思うのですが、対応してくれたお二人はとても丁寧で、しかもZOOMの画面越しにスマホの操作方法や画面も見せながら教えてくださったので、とてもわかりやすかったです。
プロボ能登事務局:
最後にこの記事を読んでくださっている方へのメッセージがあれば、ぜひお願いします。
鮎美さん:
プロボ能登は何か困ったことがあればまたご相談したい、と思えるものでした。特にZOOMを使いこなせる若い世代にはおすすめできる取り組みなので、能登で活動している方で人手やノウハウに困っている方がいればぜひ活用されるといいのではないかと思います。
一茂さん:
震災後、本当にたくさんの方に助けていただきました。ボランティアの方々や、遠くから応援してくださる皆さんには感謝しかありません。持木歯科医院のある能登町の宇出津地区にはあばれ祭という祭りがあります。ぜひ足を運んで、能登の人の温かさを感じてください。

インタビューの終わりに。持木歯科医院の看板の前で。
インタビューを終えて
お忙しい中、今回のインタビューのお時間をいただきまして本当にありがとうございました。鮎美さんは人見知りとおっしゃっていましたが、初対面からそんなことを微塵も感じさせないくらい丁寧に接していただきました。
一茂さんは、実はなんと元能登町長!という経歴にも関わらず、とてもフランクに応じてくださいました。一茂さんの暖かな人柄が鮎美さんにもしっかり引き継がれているのだなと感じましたし、そんなお二人がいる場所だからこそ、発災後にも多くの人の拠り所になっているのだなぁと強く感じました。
この度は本当にありがとうございました!
持木歯科医院
住所:石川県鳳珠郡能登町字宇出津タ字42番地1
