プロボ能登:事例紹介 すずキッチン・すずなり食堂
プロボ能登:事例紹介 すずキッチン・すずなり食堂
すずキッチンとすずなり食堂の外観
石川県珠洲市で地域の食の拠点として生まれた「すずキッチン」と「すずなり食堂」。
震災直後の避難所での炊き出しを原点に、被災地の暮らしを支え、雇用を生み出す場として発展してきました。
今回、この二つの拠点の課題を解決するために活用されたのが、LINEヤフーと能登官民連携復興センターが共同で行う人的支援プログラム「プロボ能登」です。
プロボ能登を通じて実際にどのような支援が行われ、現場の方々にどんな変化が生まれたのか、スタッフのお二人にお話を伺いました。
目次
はじめに
「すずキッチン」の角野倖多さん(左)、「すずなり食堂」の井田愛乃さん
プロボ能登事務局:
今日はよろしくお願いします。まずはお二人がここでどんなお仕事をされているか、というのをお伺いできればと思います。すずキッチンとすずなり食堂、2つの店舗がありますが、お二人はどちらを担当されていますか?
角野さん:
自分はすずキッチンでお弁当の盛り付けやレジ、電話対応、売り子など、お弁当屋の運営全般を手伝っています。もともと専門学校を卒業して地元に戻った時に、避難所へお弁当を配る活動に関わっていました。その延長で、すずキッチンとすずなり食堂が立ち上がる際にお手伝いするようになったんです。
井田さん:
私はすずなり食堂で、お客様のご案内や食器の片付け、お水の補充などを担当しています。ホール係ですね。震災後は物価の高騰などもあり、お金の使い方が変わったと感じます。なるべく使わないようにしているつもりでも、生活への影響は大きいです。
抱えていた課題とプロボ能登との出会い
プロボ能登事務局:
すずキッチン・すずなり食堂を運営する中で感じていた課題はどんなものでしたか?
角野さん:
すずキッチン、すずなり食堂のような店舗の存在は、地元の人には「新しいお店ができたね」と話が広がりますが、外部の人にはなかなか情報が届かない。それをどう広めるかが課題でした。
井田さん:
最初は和田さん(注:「すずなり食堂」の料理長で立ち上げスタッフのひとり)のアカウントでSNSを運営していたので、運営することが難しい状況がありました。「すずキッチン・すずなり食堂」の専用アカウントを作ってからは少しずつフォロワーも増えてきました。
プロボ能登事務局:
プロボ能登を知ったのはどういう経緯でしたか?
井田さん:
和田さんから聞きました。能登官民連携復興センターの方が和田さんにプロボ能登の取り組みについて説明をしたということがあり、和田さんから私たちにお話がありました。自分たちにはノウハウがなかったので、頼ってみようかとなりました。
プロボノとの協働について
プロボ能登事務局:
実際にプロボノと関わってみて、どんな印象を持ちましたか?
角野さん:
SNSに詳しくて、自分にはない感覚を持っていると感じました。とても新鮮でした。また、今回の担当者は同年代だったのでお話しやすいと思いました。
井田さん:
私は以前ドコモで働いていたので携帯の基本は分かっていましたが、ストーリーズの投稿や音楽の付け方など、これまで触れることがなかった新しい機能を学べました。
プロボ能登事務局:
ミーティングの頻度や内容など、取り組みの進め方についてはどうでしたか?
角野さん、井田さん:
週1回・30分程度でオンラインミーティングを実施しました、頻度や時間もちょうど良かったと思います。
角野さん:
お話の中で、外部の人だからこそ地元の自分たちが気づかない魅力を教えてくれました。珠洲にいると当たり前だったり気づかないことがあります。お祭りなどは別ですが、普通の休みの日も珠洲で何かする、というよりは金沢の方などに遊びにいくことが多いんです。
井田さん:
元々は「すずキッチン」「すずなり食堂」の情報を発信することだけを考えていたのですが、我々が気づけない地元の魅力、例えば地元の他の飲食店や観光スポットも併せて紹介し、投稿する発想はとても新鮮でした。
プロボ能登事務局:
プロボノでの支援を終えた今だから思う「こうしてもらえるともっとよかったな」という点はありますか?
角野さん、井田さん:
欲を言えば直接会って操作を学べる機会がもっとあると良かったです。プロボノの方は一度珠洲に来てくださったのですが、基本的にはオンラインでのお話をすることが中心でした。画面共有をしてもらうのもありがたいのですが、カーソルが見づらいことがあったり、やや複雑な操作を説明してもらう時などは分かりにくい部分もありました。また、LINEグループでやり取りができる環境も整えていただきましたが、グループ全員が見ていると思うとあまり気軽に投稿できない、という気持ちもあったので。
プロボ能登の魅力と今後
プロボ能登事務局:
プロボ能登でのサポートは、お二人にとってどんな魅力がありましたか?
井田さん:
すでに触れていますが、自分たちにない知識や感覚を得られるのがありがたいです。
角野さん:
地元の外の方にお願いをする、サポートしてもらうというのは抵抗を感じることがあるかもしれませんが、今回はお願いしてよかったなと思いました。僕も井田さんと同感です。
プロボ能登事務局:
我々としては能登の復興に少しでも貢献できるよう、今後も活動をしていきたいのですが、能登の復興という視点でいうと、今後どんなことが必要になってきそうでしょうか?
角野さん:
今後は、外から人が来て働ける大きな仕組みや、人手不足の解消につながる仕組みがあれば良いと思います。
井田さん:
観光客の方にもっと珠洲に来てもらいたいなと思っています。そのことで経済効果も生まれ珠洲が活気付くことにつながると思います。ただ一方で、マナーの悪化は気になるところです。多くの方はマナーある行動をしてくださるのですが、一部の方が配慮のない行動をすることでそれが伝播してしまうこともあるのではないかと思っています。
インタビューを終えて
まずは業務のお忙しい中、プロボノ社員への対応や、今回のインタビューのお時間を割いてくださった角野さんと井田さんに感謝を申し上げます。プロボ能登の取り組みがお二人やすずキッチン・すずなり食堂に少しでも貢献できていたのであれば嬉しい限りです。
ありがたいお言葉もいただきましたが、もっとできることや、これからの能登に必要なことも示唆に富む内容でした。
プロボ能登が単なる技術支援にとどまらず、地域の人と外部人材が共に学び合う場となり、さらなる支援の輪が広がっていくようにしていきたいと思います。